監獄秘話

第4話 建物の歴史

ある時炎につつまれやがて時代に埋もれてゆく・・・明治42年、網走刑務所は火災に見舞われ、ほぼ全焼している。

わら工場から上がった火の手は強風にあおられて燃え広がり、またたくまに舎房、庁舎、工場、倉庫をなめつくし、独居房一棟を残しただけで、全てを灰にした。その後、復旧工事が急がれ、三年後の明治45年に完成した。

庁舎や、受刑者を収容する放射状舎房は、この時につくられたものである。庁舎は正門中央にある西洋風の建物で、当時この地方では他に例を見ない近代的な建物であった。近代的なのは建物ばかりではなかった。ボイラーが設置され、炊事、浴場、洗面所などに給湯された。また、蒸気による発電設備も備えられ、庁舎や舎房には網走で最初の電気の灯がともった。

こうして、一時期、日本で最も近代的と言われた網走刑務所のさまざまな建物も、昭和48年から10年計画で進められてきた新築工事にともなって次々と姿を消した。網走刑務所の長い歴史を刻み込んで、赤レンガの壁だけが残されている。